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January 02, 2014

「即興演劇」×「ライフスキル」

「ライフスキル」という言葉があります。
これはWHO 世界保健機関が提案したもので「日常生活で起こるさまざまな問題や要求に対して、建設的かつ効果的に対応するために必要な能力」のことです。

「ライフスキル」の構成要素は10つあります。
1) 決断力
2) 問題解決能力
3) 創造的思考
4) 批判的思考
5) 効果的なコミュニケーション
6) 対人関係スキル
7) 自己認識
8) 共感
9) 感情に対応できること
10) ストレスに対応できること

これらのスキルは、もちろん明確な分かれ目があるのではなく、それぞれが影響しあっています。そしてこのような力を獲得することは、人間成長や社会への適応にとても大事だと言われてします。

この「ライフスキル」の研究は、「スポーツを通して、このようなライフスキルを獲得させることができるのではないか」という仮説において、おもに体育やスポーツ心理学などの分野でなされています。

さて、私は「即興演劇」という手法を用いて、人々がより自分らしく生きるための「場」としてのワークショップを数々行っています。その中で、クライアントから求められることは「コミュニケーション能力」や「ストレスのない人間関係を築くにはどうしたらいいか」など、人間同士の関わりの難しさに対応することが多くみうけられます。「リーダーシップ」や「表現力」や「発想力」をテーマとしたワークショップも行いますが、実際に参加者に対面してみると、それらのテーマの学びを起こす為には、まず「安全な場」として「風通しのよい人間関係」が必要になるため、やはり同じように「人間関係」をテーマにしたエクササイズを必ず行うようにします。

このように「ライフスキル」で掲げられている要素は、自覚はありませんでしたが、わたしのワークショップでも考慮に入れているものたちでした。

では、「ライフスキル」の要素と、「即興演劇」のトレーニングはどのように対応できるでしょうか。
ざっくりではありますが、考えてみました。

1)決断力
「即興演劇」を行う上で、「その場で“決める”」ことはとても必要とされています。“迷う”まえに“決める”。そうすれば表現しようとする世界が“抽象”から“具体”へと明確化します。表現することがらをより具体的にすることによって、自分のアイデアを人々と共有することが可能となっていきます。

2)問題解決能力
「即興演劇」の中で作られるストーリーに対して、表現者たちは「解決策」を見いださなくてはなりません。ストーリーとは「架空」であり「日常生活の問題」ではありません。しかし「現実ではないストーリー」を解決することで、問題を疑似体験し、日常への解決の力を養うことができるのではないかと思います。

3)創造的思考
「即興演劇」を行ううえで必須の能力です。この能力を開花させるためには、からだがリラックスしていること、批判される恐怖から解放されていることなどが必要となります。

4)批判的思考
「即興創作」を支えている考え方に「イエスアンド」があります。この「イエスアンド」は一見「何にでもOKを出す」という無批判的な態度のように見えます。しかし、そうではありません。「イエスアンド」をする物事は、創作するための人間関係であり、創作のためのアイデアであり、思考であり、哲学です。そして「自分のほんとうの気持ちに“イエス”する」ことでもあります。逆に、批判的な思考で、社会や日常の問題を問いかけるといった表現も大事なことです。また社会を批判的にアイロニーを込めて表現することもあっていいと思います。そういう意味で、表現として、創作として、批判的思考も即興演劇では必要だと思われます。

5)効果的なコミュニケーション
ここでのコミュニケーションは「表現力」のことを言っているようです。だとしたら、「即興演劇」はまさしくそれをトレーニングすることのできる場だといえます。日常で表現の練習をすることはなかなかできません。「いつもの自分」のジェスチャーを少し大きくしてみることぐらいでしょうか。本来「多面体」である自分、いろいろな表現の可能性を秘めている自分の表現力を高めるためには、「その為の場所と時間」が必要なのではと思います。(特に日本では)


6)対人関係スキル
ここでの対人関係スキルとは、ポジティブな人間関係を築くことのようです。これは「即興でなにかを創作する」作業において、非常に大事なことです。それを揺るがさないために「イエスアンド」や「相手を輝かせる」など、お決まりの「インプロルール」がたくさんありますね〜。

7)自己認識
自己を理解することです。「即興演劇」の文脈でいいますと、「インプロのエクササイズ」を行う過程で、いつもの自分の「くせ」に気がつくことが多いと参加する人たちはおっしゃいます。それは「即興でおこなう」ことによって、自分の「普段」が、「エクササイズ」という非日常の枠組みの中で見えてくるからではないでしょうか。日常のくせは、なかなか日常で気がつくことはできません。また「普段は出さない自分」を現してみることで、「自分にはこういう面があった」という発見をすることができます。もちろんこれは「即興演劇」だけではなく「演劇」がもつ力でもあります。

8)共感
「即興での集団創作」には「共感性」が必須となります。これがないと、相談しないで、その場で同意したイメージを作ることができないからです。「即興演劇」のエクササイズの中には、共感を学ぶことができるものがたくさんあります。

9)感情に対応できること
人間はさまざまな感情を持っているにも関わらず、そのほんの一部しか、日常生活では出すことができません。しかも、たとえば日本では「会社で笑ってはいけない」とか「電車の中で大声で笑ってはいけない」とか「人前で怒ってはいけない」とか「男の子なんだから、泣いてはいけない」とか「女の子なんだから、笑顔でいなくてはならない」などと、日常での「感情の制限」がものすごくあります。それ以外の感情を出すことは禁じられており、つねにいびつな感情表現を行うことを強要されている面があります。また最近では、「表情のない若者が増えてきた」と言われています。たしかし「能面」のように、顔を見てもどんな感情なのかわが分からない人間が増えているように思えます。(わたしは、日本では、中年や高齢者にも多いように感じます。)

さきほども「日常で表現の練習をする場はほとんどない」と書きましたが、感情についても同じことです。さまざまな感情があるにも関わらず、それを発散することができない社会状況となっています。

ここで「演劇」や「即興演劇」の良さが、もっと注目されてもいいのではと感じます。この世界では、さまざまな感情表現を体験することができますし、それは架空の世界でありますので、自分の日常で、たとえば「人間関係のトラブルになる」などの悪影響はありません。

10)ストレスに対応できること
人間はある程度、ストレスを抱えていたほうがいいのだという節もあるように、かならずしも「ストレス=悪いこと」ではありません。ただ、ストレスに振り回わされてしまうのではなく、ストレスをコントロールし、仲良くつき合う「理性」が必要だと思われます。このように一見悪い事のように見える物事を、コントロールする力は「理性」なのではないでしょうか。そして「理性」を育むには、「現実をそのまま受け入れ、理解する」力が必要であり、そういう意味で、「今おこっていることを、丸ごと受け止める」という「即興演劇」の理性的なあり方は、この力の獲得にも役に立つと考えられます。

このように、ライフスキルの10のスキルを獲得するために「即興演劇」はずいぶんと役に立つのではないかと予想されます。これは実際にワークショップをやり、自分もパフォーマーとして長年「即興演劇」にたずさわってきて実感していることでもあります。

今後は、もっと具体的にもっと深く、考えていきたいと思っています。

絹川友梨

参考資料
Programme on mental health workld health organization Geneva, Life skills education for children and adorescents in schools,
1997

後記:あとで自分の文章を読み返して、、。

この文章は「いかに即興演劇のトレーニングが日常生活に役立つか」という、言わば即興演劇の「応用的」ポイントを綴っているだけで、なんか今よむと、「即興演劇はいいよ〜!」と「押し付けがましく言っている」だけのようにも感じます(苦笑)。これはわたしの未熟なところですが、ここで書いていることは「コンテンツ」であり、what について。本当は「どのように指導するか。どのように学ぶか」というhowの部分がと〜っても大事で、そこについて、またまた書ききれていない自分を感じています。つまりどんなに「即興演劇の応用」に「学びの要素」があったとしても、それを「どうHOW」使うかによって、まったく違ったものになってしまうことは明白なのです。そして現実的にそういう問題が生じていることを、さまざまな「即興演劇」外部の方々からのご指摘によって感じています。そこを書いていかなくては、、。いずれにしても「即興演劇」を応用したトレーニングによって、日常生活を豊かにするためのヒントを学ぶことができる可能性はあると思います。

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